最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)862号 判決 1958年3月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告代理人河田広、同中川清太郎の上告理由について。
物品税は物品税法が施行された当初(昭和四年四月一日)においては消費税として出発したものであるが、その後次第に生活必需品その他いわゆる資本的消費財も課税品目中に加えられ、現在の物品税法(昭和一五年法律第四〇号)が制定された当時、すでに、一部生活必需品(たとえば燐寸)(第一条第三種一)や「撞球台」(第一条第二種甲類一一)「乗用自動車」(第一条第二種甲類一四)等の資本財もしくは資本財たり得べきものも課税品目として掲げられ、その後の改正においてさらにこの種の品目が数多く追加されたこと、いわゆる消費的消費財と生産的消費財との区別はもともと相対的なものであつて、バチンコ球遊器も自家用消費財としての性格をまつたく持つていないとはいい得ないこと、その他第一、二審判決の掲げるような理由にかんがみれば、社会観念上普通に遊戯具とされているパチンコ球遊器が物品税法上の「遊戯具」のうちに含まれないと解すことは困難であり、原判決も、もとより、所論のように、単に立法論としてパチンコ球遊器を課税品目に加えることの妥当性を論じたものではなく、現行法の解釈として「遊戯具」中にパチンコ球遊器が含まれるとしたものであつて、右判断は、正当である。
なお、論旨は、通達課税による憲法違反を云為しているが、本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであつても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであつて、採用し得ない。
従つて、本件賦課処分を当然無効であると断ずることはできないとした第一審判決を支持した原判決は正当であつて論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)